いいものはかわらない 変えてはいけない
江戸時代初期にあたる寛永元年(1624)、高橋家の初代清右衛門は、筑後国久留米藩の港町大川・榎津に移り住み、二代四郎兵衛が造り酒屋を興しました。筑後川の水に恵まれ、豊かな大地を持つ筑後国は米どころ、米どころはまた美酒の産地、酢は酒の発酵からうまれるもの。その自然な流れに沿うように、四代清右衛門が酢造商いを始めました。それが「庄分酢」の始まりであり、以来三百年、酢屋を営んでいます。
昔ながらの酢づくり(静置発酵法)
庄分酢では、一年中純米酢や醸造酢などの食酢を醸造しています。その製法は発酵や熟成に時間をかけた丁寧なものです。
二十石の木樽や発酵槽に入れられゆっくりと時を過ごします。
酸の発酵ガスが金属を腐食させるため木桶や蔵の造りには金属の使用を極力控えています。
酢職人たちは菌を見守り、微生物の働きを促してやります。冷え込みが厳しければ布団を被せるように木桶にむしろを巻いてやり、蔵の戸を開けます。絶えず「酢の成長」を気にかけているのです。
決して急がない、目先にとらわれない
蔵の中には「蔵付き菌」と呼ばれる菌がすみ着いています。その菌が酢を育てまろやかな味を醸すのです。
蔵発酵、タンク貯蔵を経て、薄い琥珀色の落ち着いた酸味と香りを持つ酢となります。
速醸酢に比べるとはるかに時間も手間もかかりますが、それでもこの方法を300年変えていません。もちろん温度管理などには現代の技術も導入していますが基本的な酢造りの製法は昔ながら。急いで造ればいいとは決して思わないからです。
安心と安全を第一に歴史の中に現代性を
庄分酢では、商品出荷前に衛生管理はもちろん、検瓶も瓶詰め前と後に2回行うなど万が一に備えた安全管理を徹底しています。最高級の酢を安心してお使いいただくために最後まで気を抜きません。
庄分酢はただ歴史に頼っているだけではありません。
伝統手法を守る一方でさらに良い酢を造ることを考え、現代の生活にマッチした商品の提案を考えています。
歴史の価値と新しいものの価値を融合させることこそ、次代への継承なのです。
庄分酢朝倉工場 あさ蔵の杜
米水、厳選素材が酢の原点。よりよい酢造りを目指して、庄分酢は、平成21年4月から朝倉市杷木林田にて食酢の仕込みを始めました。
水質の良い、自然環境に恵まれた澄んだ空気の中でゆっくりとお酢を発酵醸造させています。
ビネガーレストラン「時季(とき)のくら」は、朝倉工場の敷地内にあります。